航空業界の脱炭素化: IATAのWSS 2024からの主な洞察

シンポジウムの重要な成果は、SAFの生産を加速させる必要性が極めて高いことでした。この点はIATA事務局長Willie Walsh氏などの業界リーダーによっても強調されました。SAFは現在世界で稼働中の24,000機の航空機への燃料供給となる可能性があるにもかかわらず、特にラテンアメリカなどの地域では生産が限られています。Milena氏とRussell氏の両氏は、この問題の緊急性について考えを同じくしています。彼らは、航空会社はSAFの利用を増やしたいと熱望しているにもかかわらず、供給が限られ、コストが高いために導入が難しいという点を指摘しています。 

Milena氏は下記のように述べ、米国と欧州以外の航空会社、特にラテンアメリカの航空会社は、SAF生産上の制約があるため、SAFへのアクセスに関して大きな課題に直面していると強調しています。「航空会社は脱炭素化を望んでいます。しかし特に新興市場ではSAF供給が十分でないため、排出目標の達成に苦労しています。2050年のネットゼロ目標の達成に向けて、出来るだけ早く生産規模を拡大するためには、政府のインセンティブによりSAF生産への投資を促進する必要があります。」 

国際航空のためのカーボンオフセットおよび削減制度（CORSIA）も、議論のもう一つの重要な焦点でした。航空会社は、CORSIA適格カーボンクレジットを購入し、SAFに投資することで、CORSIAの義務を果たすことができます。しかしRussell氏は指摘します。カーボンクレジットは入手可能であるにもかかわらず、その需要には大きな遅れがあります。カーボンクレジットの方がコスト効率の高いコンプライアンス戦略であるにもかかわらず、航空会社はSAFに重点を置いているようです。 

Russell氏は下記のように指摘します。「CORSIA適格カーボンクレジットは脱炭素化に対し、直ちにソリューションを提供しますが、航空会社はこの市場への参入を躊躇しています。WSSでは主にSAFに焦点が当てられました。しかし現実的には、SAF生産が拡大途上にある中で、カーボンクレジット、特にCORSIAラベル付きのカーボンクレジットが、航空会社が活用できる貴重なツールとして挙げられます。」 

政府の支援と財政的インセンティブはWSSで繰り返し取り上げられたテーマです。業界リーダーはSAF供給の課題に対して、地域的な解決策ではなく世界的な解決策を主張しています。Russel氏は指摘します。「航空業界の脱炭素化の取り組みを推進するためには、特にSAFの生産とライフサイクル評価に関する規制を調和させる必要があります。」世界的にSAF生産拠点への投資を奨励するための支援的な政策環境を、世界中の政府は構築する必要があります。  

航空業界がSAF生産の拡大とCORSIA目標の達成に取り組む中、民間部門と政府間の連携が鍵となるでしょう。Milena氏の指摘によれば、特にブラジルのような国では、今後のSAF義務化により持続可能な燃料生産の基盤が整うため、官民連携が重要とのことです。同氏は言います。「ブラジルのSAF義務化推進と、RenovaBioプログラムによるバイオ燃料の経験は、持続可能な燃料を世界規模で拡大するための貴重な教訓を提供しています。」 

航空業界の脱炭素化の取り組みは進行中ですが、まだまだ改善が必要な点が数多くあります。WSSのようなイベントは、意欲的な目標の設定から実行可能な戦略の実施へと移行するための、貴重なロードマップを提供します。焦点が実用的な解決策に移るにつれ、SAFとカーボン クレジットの両方が、航空業界が排出目標を達成する上で重要であることは明らかです。 

Milena氏とRussell氏の両氏とも、当社の重要な役割を強調しています。当社はこれまで航空業界における企業による持続可能性への取り組みを促進してきました。当社には専門知識と世界的なネットワークがあります。当社は、航空会社や企業による脱炭素化目標の達成を支援するためのキープレーヤになるでしょう。Russell氏は下記のように結論します。「たとえSAF証明書（SAFc）の予約・請求取引を通じてであれ、高品質のCORSIA適格カーボンクレジットを通じてであれ、当社は航空業界のネットゼロの未来への移行を支援するツールと専門知識を持っています。」 

最後になりますが、当社は航空会社、特に中小規模の航空会社に対するCORSIA戦略とSAF調達に関するガイダンスを提供することができます。当社による支援は、あらゆる規模の航空会社が複雑なコンプライアンスの煩雑さを乗り越え、SAFを活用して脱炭素化目標を効率的に達成できるようにします。