「EU域内排出量取引制度(EU ETS)」が海運部門に拡大
EU ETSが拡大し、海運部門を含むようになりました。2024年から、欧州連合(EU)/欧州経済領域(EEA)内の港に出入港する場合、船主は自社船舶の排出量に対して支払いを行うことになります。この法律を順守するためには、船主が毎年、実際の排出量分の排出枠を購入・提出する必要が出てきます。企業はこの移行に備えて、コンプライアンス戦略の作成・実施および持続可能なバイオ燃料への切り替えを、今すぐ開始する必要があります。
何年もの議論を経て、最近「EU域内排出量取引制度(EU ETS)」が正式に拡大され、海運部門が含まれることになりました。
海上輸送から生じる排出量を合計すると、世界排出量のほぼ2%に相当します。そのため、その脱炭素化の奨励に焦点を合わせた当イニシアチブは、大きなインパクトを与えられる可能性があります。基本的に2024年以降EU内の港に出入港する場合は、航海中の排出量に対して、「EU排出枠(EUA)」およびEU ETSを介して船主が支払いを行うことが義務づけられます。
しかし、コンプライアンスやEU ETSに初めて取り組む船主と運航会社は、対策の理解に混乱や不安を感じるかも知れません。企業は次のような疑問を抱きます:
どうすれば当社は新たなコンプライアンス規則の順守を確保できるのか?どのEUA調達戦略が最もタイムリーでコスト効率が最高なのか?どうすればこの移行中に事業の混乱を最小限に抑えられるのか?どうすれば事業の準備が整っていることを確認できるのか?
この記事ではこれらの疑問を追究し、EU ETSに関する13年の経験から得た洞察の一部をお伝えします。
この海運部門へのEU ETSの拡大は船主と運航会社にとってどんな意味がありますか?
この規制の進展は、2024年以降にEU/EEA内の港に出入港する場合、船舶の温室効果ガス(GHG)排出量に対して船主が支払いを行うよう義務づけられることを意味します。排出量の価格を設定することで、再生可能燃料に切り替える企業が増え、業界全体がイノベーションを迫られることを、当局は期待しています。
この拡大は、EU経済圏全体の排出量削減目標と一致しています。
どの船舶が影響を受けますか?
2024年から、5,000総トン以上の船舶が順守を義務づけられます。また、将来これを拡大するという野心も存在しています。2027年までに、義務の対象になる船舶重量の下限が引き下げられ、400総トンという軽量の船舶も対象になります。
「MRV規則」の対象になり、商業目的で貨物・乗客を輸送してEEA内のあらゆる港に寄港する、全ての船舶に適用されます。
どの航路が影響を受けますか?
このイニシアチブはEU/EEA内の港で運航する全ての船舶に適用されますが、平等というわけではありません。
EU/EEA内の2個所の港の間を航海する船舶は、排出量の100%をカバーしなくてはなりません。
EU/EEA外の港からEU/EEA内の港に入港する船舶は、排出量の50%をカバーしなくてはなりません。
EU/EEA内の港を出港して域外を航海する船舶は、排出量の50%をカバーしなくてはなりません。
EU ETSの理解
お客様の全船舶――またはその一部――が、影響を受ける船舶のカテゴリーに該当する場合、EU ETSへの参加を開始する必要が出てきます。そのため、内容を正確に理解したうえで、コンプライアンス達成に向けた道のりを開始することがベストです。
EU ETSはキャップ・アンド・トレード制度で、企業は決められたプールからEUAのような排出枠を購入します。1つの排出枠が、排出されたCO₂ 1トンに相当します。2024年から海運部門の企業は、その年に船舶が出した排出量をカバーするのに十分な排出枠を年末までに提供する必要が出てきます。余った排出枠は販売したり、翌年に繰り越したりすることが可能です。
従って海運会社は、基準に当てはまる各保有船舶が排出するCO₂ トン数の全量をカバーすることを義務づけられます。正しい量のEUAを購入して当局に提出することで、これを実施します。このイニシアチブは、排出枠を引き渡す責任を負う当事者は「海運会社」だと言及し、さらに「船主、船舶管理者、または裸用船契約者」と定義しました。
どうすれば事業のコンプライアンス目標を確実に達成できますか?
コンプライアンスの確保とは、実際の排出量をカバーするのに十分な排出枠を調達して引き渡すことと、カバーする必要がある排出量の最新の数字を把握し続けることを意味します。
例えば、2024年にEUAでカバーする必要があるのは、排出量の40%のみです。これが2025年に70%に上昇し、2026年までに排出量の100%をEUAでカバーする必要が出てきます。
カバーする必要がある温室効果ガス排出量のタイプも、変化して行きます。2024年に配慮が必要なのはCO₂のみですが、2026年までに、窒素酸化物やメタンといったCO₂ と同等のガスの排出量にも対処する必要があります。
コンプライアンスを達成・維持するためにベストなアプローチは、将来の変更に関する情報を提供し、対策を講じるチャンスを与える、サステナビリティの市場・法律の専門家とパートナーを組むことです。
どうすればビジネスの混乱を最小限に抑えられますか?
企業のコンプライアンス目標達成の支援を10年余り行ってきた当社のアドバイスは、取り組みを開始するのは早いほどよい、ということです。2024年はまだ先だと思うかも知れません。けれどもビジネスにとってできる限り最高の、コンプライアンスに適合するEUA調達戦略を見出し、作成して、実施するためには時間がかかります。
また早めに行動を起こせば、より早い段階で予算をさらに透明化できるので、よりよい計画の立案に役立ちます。これによって目標達成に必要な数量のEUAを購入・利用できる余裕ができ、トラブルや業務停止のリスクを最小限に抑えられます。また、他の航路を探す時間の余裕も持てるため、例えば持続可能なバイオ燃料に切り替えて全船舶の排出を削減することも可能です。このことは、EUAの購入量を減らしてもコンプライアンスを達成できることを意味します。
コンプライアンス違反の場合はどんな反動がありますか?
これらのコンプライアンス目標を達成しない場合、高額な費用がかかる重大で破壊的な結果を招きます。
企業が毎年正しい数の排出枠を引き渡さない場合、CO₂ 1トン当たり€100相当の罰金を払うことになります。2年連続でコンプライアンス違反になった企業は、排出枠の義務を果たすまで、EU/EEA内の港への入港を拒否される可能性があります。
ACTは企業のコンプライアンスをどのように支援できますか?
その方法とは、御社のビジネスのニーズに合わせて最適化したEUAおよび調達の戦略を提供することです。
ACT Financial Solutionsは、「第2次金融商品市場指令(MiFID-II)」のライセンスを取得した組織内の投資会社で、EU ETSの新たな義務の達成を確保し、最適なコンプライアンス戦略を探すことに専念しています。
同社には市場に関する経験と専門知識があるので、 EU ETS での排出量枠調達に必要なサポートを提供し、コンプライアンス目標を効率的かつコスト効率よく達成します。ACTの機敏で順応性があるアプローチを利用すれば、変化し続ける市場と法律に合わせて対処することができます。
お客様に必要な持続可能なバイオ燃料を提供することで、排出量を削減します。
EU ETSを海運部門まで拡大したことの主眼は、排出量に対する支払いを船主に課すことで、この部門の脱炭素化を動機づけすることです。しかしながら、排出量に対して支払いを行うだけでなく、排出量低減対策を講じれば、企業は脱炭素化を実施して購入が必要なEUAの数量を減らすことができます。
実際、バイオ燃料を利用すれば、船舶のCO₂ 排出量を最大90%削減できます。当社の持続可能なバイオ燃料はドロップインです。このことは既存のエンジンと互換性があることを意味します。このため迅速・容易な移行を確保できるので、ビジネスに混乱をきたしません。また当社の持続可能なバイオ燃料は、持続可能なごみの流れから生み出されるため、生産する際に土地の損失や水の使用を引き起こすことがありません。
私たちは2014年以来、世界中でバイオ燃料を生産・提供してまいりました。当社の信頼できる一貫した供給、短期・長期的なコミットメント、そして競争優位性がある価格が、企業から頼りにされています。
今すぐ始めましょう
当社には排出量規制の最新情報を常に把握しているチーム、13年間のEU ETSの経験、そして持続可能なバイオ燃料の専門知識があるため、企業のコンプライアンス目標の達成を支援するのに理想的なパートナーです。
もっと詳しく知るには、当社の「海運ソリューション」チームに直接お問い合わせください:maritime@actcommodities.com
**この内容は、EUの議会・委員会・理事会の最新の試案に基づいています。万一、官報に掲載される最終版の内容に変更があった場合は、ACTが新たな更新情報を提供します。